+α1です。短い後日談です。
本編読んでからどうぞ〜(^v^*)














 あれから半年がたった。




 ロロの両親は最初渋々認める、という風だったのに、春に近づけば近づくほどロロよりも一人暮らしに乗り気になって、今日は東京に仲良く二人で賃貸を見に行った。ロロは午前中の補習テストのせいでお留守番だ。ルルーシュも高校の入試日で家にいた。ナナリーは来年の受験について学校で説明会があるらしく出かけて行った。
 「あ、降ってきたね」
こたつでぬくぬくとしていたロロは障子の向こうでちらほらと落ちてきた雪が、先週積もった上にさらに積もっていくのを眺めていた。
 「ああ、本当だ。……ナナリー大丈夫かな」
出かけるときも氷が張った道路が心配だと一緒に行くと言ってきかなかったルルーシュはそわそわとしはじめて、操っていたパソコンを閉じてロロの隣に入ってきた。
「また、ナナリーに怒られるよ」
「でもなぁ……」
「傘持って行ったんでしょ。平気だよ。友達もいるんだから」
朝、ナナリーの友達の前で散々付き添うとわめいた心配性の兄にさすがに辟易した彼女はルルーシュに向かって、大丈夫です、ときっぱりと珍しく怒った口調で出かけて行った。ルルーシュは朝からそれで落ち込んでいたはずなのだが、すっかり何処吹く風だ。
 「いいじゃない。――僕とふたりっきりは嫌?」
せっかくの二人っきり。ルルーシュは少しだけ顔を赤くして、そんなことはないが、と言うのでロロは笑った。その頬っぺたに口付けて、ココアをいれてくる、と席を立った。
 台所に立ちながら、泣いた。時々、ほんの時々、本当に時々、言い様のない言う必要もない寂しさに襲われて涙が出た。だけど、一過性のものだ。少しだけ我慢すればいつか収まる。
 ロロは決めたのだ。ひとりで頑張ると。だから、このココアをいれたら、いっぱいルルーシュとふざけあってそんな寂しさ忘れるのだ。春になったら離れ離れになるのだから。それまでにいっぱいいっぱい思い出を作るのだ。触れ合っておく。寂しくて死んでしまいそうにならないように。寂しいとき、温もりを思い出せるように。そんなロロを知っているルルーシュがいるのを知っている。そしてそんなロロを応援してくれるルルーシュがいるのも知っている。だから、頑張るのだ。泣き言なんて、言っていられない。よしっと両頬を叩いて気合をいれる。
 ココアをふたついれてルルーシュの待つ部屋に戻るため歩いていると、湯気でくもる前方からルルーシュのぼそぼそと喋る声が聞こえてきた。どうやら、電話をしているようだ。




「……そうか、うん、悪いな、……会長に?……ジェレミアに全てやらせてしまったな、本当にすまない。我が侭を聞いてくれてありがとう。うん、おかげで、ふたりっきりで過ごせそうだ。ああ、明日は行くよ。うん、俺の分の仕事はそのまま残してといてくれ。うん。ありがとう、じゃあ」



 ロロは少しの間つめたい廊下に立ちすくんでいた。ルルーシュが心配して探しに来てくれるまで、ずっと下唇を噛んで、涙を堪えて、俯いていたけれど、大好きな兄に微笑むことが出来た。
 (そうだよね。高校の入試日に、生徒会の人間が休みだなんてあるわけない)
それを無理を言って休んでくれたのだ、きっと。兄は真面目だからきっと凄く勇気がいっただろう。

 自分だけが好きなのじゃないかと不安になったりしたら、きっとこの日のことを思い出そう。兄もきっとこっちで寂しいと泣いてくれていると、思い出そう。ルルーシュと同じ感情を分け合えるのなら、少しくらい離れ離れになることなんてちっぽけなことだ。ルルーシュに少しでも寂しい思いをさせないために、ロロの歌声をたくさん聞かせてあげられるように頑張ろう。
 ジェレミアにはこっちに戻ってきたときには皆よりちょっとだけ高い東京土産をあげようと、ルルーシュの腕の中に大切に優しく包まれたロロはこっそり思った。



――上京に向けて動き出した冬のことだ。








終 α2















20081211『Fire Flower+α1』