「ひと〜つだけ、お前に力をやるぞ!」 V.V.妖精が、しくしく泣いていたロロの元に現れてそう言いました。 ロロは小さな村の大きな研究所で記憶にない頃から両親の顔も知らず、黙々と働いてきました。けれどももうそんなことはまっぴらごめんだと、この間、森の中で町外れの大きなお城に住んでいる王子様と会ったときに思ったのです。 ロロはせっせと研究所に住むみんなのために夕食にする木の実や山菜をとっていました。あまりにも量が少なかったのでいつもよりもだんだんと森の中へ足を進めていき、そうして、王子様と出会いました。 町外れのボロボロのお城に住む、王子様とお姫様の兄妹は有名でした。お妃さまが死んでしまってから、王様は人が変わってしまい二人を都にあるお城から追い出してしまったのです。 けれども王子様とお姫様は、野原でやはり噂どおり仲つむまじい様子でした。目の見えないお姫様の代わりにクローバーの冠を編んであげて、足の動かない妹を気遣ってやさしく接する王子様。 ロロは心がときめくのを止めることは出来ませんでした。(僕!この人の弟になりたい!)こんなに優しい人間をロロは見たことがなかったのです。けれども、研究所に帰ったロロに待っていたのはただの現実です。結局話しかけることすら出来ずにずっと王子様を見ていたロロは夕ご飯の支度が間に合いませんでした。 それで、ロロはその日の罰で今日、町外れのお城で舞踏会があるというのに連れて行ってもらえなかったのです。せっかくもう一度、王子様を見るチャンスだったのに、ロロはここで無意味な豆拾いです。 しくしく泣いてしまうのも無理ありません。 「そんなに泣く子は嫌いだな」 「うるさい。何処から入ってきたの。あんた誰?」 「気にしないで。可哀相な君にひとつだけ力をあげるけど、どんなのがいい?」 ロロはぴたりと泣き止みました。不審な妖精が何を言っているのだろうと最初は疑心暗鬼でしたが、もしかしてロロを王子様の弟にしてくれるかもしれません。 「僕、弟になりたい」 「?力だよ?ギアスをあげるよ」 「ギアスって何?僕はルルーシュ・ランペルージの弟になりたいんだ」 「それは……よくわからないけど、ギアスにそんなのあるのかなぁ?まあいいや、目を瞑ってみて。上手くいけば、弟になれるギアスが芽生えるかも」 「本当!?」 ロロは言われた通りに目を瞑りました。V.V.が手の平を頭の上にかざした気がしました。 「んー……ちょっと失敗しちゃったかも」 「?」 V.V.の言葉にロロは目を開けました。妖精の姿はもう目の前にはありませんでした。けれども自分の中の何かが変わったことをロロは何となく肌で感じました。 ロロは早速お城に向かって歩き始めました。研究所になんか戻ってやらない!そう決めたのです。もうウジウジ悩むのはやめです。あの王子様の弟になるのだからそのほか全てを捨てるのです。 途中、ルルーシュ王子を暗殺しようと話をしている人たちがいました。どうやら都から来た馬車の中から聞こえるようです。ロロはギアスを使ってみました。心臓が今までないような痛み方をして、苦しいような気がしましたがそっと近づいて、中にいた騎士たちを暗殺することに成功しました。 「僕は、時間が止められるんだ!」 妖精がくれたのはこの力だったのです。ロロは、けれども時間を止めたからって何が出来るのだろうと考えてみました。 お城についたとき、ロロはこの力が使えることを確認しました。門番達は招待状を持ってこなかった人間を弾いていたのです。当然、ロロはそんなものを持っていませんでした。けれどもギアスを使うとあら不思議、ロロは簡単に人の波をくぐってパーティー会場に入ることが出来ました。途中、お城の時計が七時を伝えました。時間は動いていたのです。時を止めるのではなく、ある一定の人間の動きを止めることが出来る力みたいです。 中に入ってわくわくしていたロロですが、いつまでたってもルルーシュが現れません。他の参加者も訝しそうです。 「今日はお集まり頂き、ありがとうございます。ゆっくりしていって下さい」 やっと現れたルルーシュ王子は取り急ぎそう言うと、さっさと何処かへ去っていってしまいました。ロロも他のお客もびっくりしましたが、ダンスパーティーは始まりました。 ロロはパーティーを楽しみにきたわけではありません。ルルーシュに会いにきたのです。それでそっと会場から出て、お城の奥深くへ入って行きました。 ロロは驚きました。お客に見えるところはボロボロのお城とは言えそれなりの豪奢さをたたえていましたが、一歩一歩奥に行くにつれ、赤いふかふかの絨毯は冷たい石畳に変わり、清潔な白い壁は高いところに蜘蛛の巣が張ってボロボロになっていました。けれども古いながらもきれいに掃除をされています。 ロロは首を傾げました。外には数人の憲兵などがいましたが、奥は静まり返っています。いくら追放された皇族だからと言って、これは少し防犯意識が薄いのではないのだろうか、まるで暗殺者などに頓着していない様子です。むしろ、窓があまりなくこれでは敵がせめてきたら出入り口が少なすぎて逃げる術を失ってしまいそうな構造です。 ロロはそっと進んでいきました。本当に誰もいません。後ろからは音楽が申し訳程度に聞こえてきます。ルルーシュは何処にいるのでしょう? 「お兄さま…?」 あるドアの前を通過するときに、か細い声が聞こえてきました。ロロは聞いたことのある声に立ち止まります。あの日、王子と運命的な出会いをしたときに一緒にいた王女さまの声です。 ロロはそっと扉を開けてみました。 天蓋ベッドに寝かせられたお姫さまは具合が悪そうです。 皇族の部屋にしては殺風景で、けれども出来るだけ可愛い部屋にしようという努力はいたるところに見えました。レースをたくさんあしらってあったり、ピンクを多用していたり、それはもしかすると盲目の王女さまが自らやったのではなく、兄であるルルーシュが試行錯誤して繰り返したのだろう努力のあとのようでした。 「お兄さま?」 ナナリーが不安そうに聞いてきます。ロロはなんと応えてよいのかわからなくて、黙っていました。 「だれ?…お兄さまではないんですね」 「……ロロ…」 「ロロさま?すみません、私、今こんな格好で」 確かにダンスパーティーの服装ではありません。そう言うと咳き込んでしまったので、もしかしたら彼女は病気なのかもしれません。この間はピンクのふわふわしたドレスにくるまれていた彼女は、ふかふかの布団にくるまれていました。枕元には積みに積まれたぬいぐるみの山。ルルーシュの愛の証。 ロロはどうすればよいかわからなくて、突っ立っていました。ナナリーは笑いました。 「よろしければ、こちらへどうぞ。お兄さまのお友達ですか?」 「いや……兄に、」 「兄?ロロさまのお兄さまですか?」 お姫さまがあまりにも優しい声で尋ねてくるので、免疫のないロロは困ってしまいました。嘘をつくわけにも、本当のことを言うわけにもいきません。どうしよう、と話をつなげようと考えて、 「来る途中で、あなた達を暗殺しようとしている人たちを見かけたものだから、注意を言いに」 「暗殺?…まぁ!」 ナナリーはびっくりしたように口元を押さえました。ロロはナナリーの青くなった顔に逆に驚いてしまいました。 「だ、大丈夫!僕が倒しておいたから」 「まぁ。ロロさんお怪我は?危険ではありませんでしたか?」 ナナリーの気遣いに、あまり人に優しくされたことのないロロはすっかりどうしていいかわからなくなってしまいました。ナナリーはいい子で、ロロはもしかしたらこの子のお兄ちゃんになれたら自分はとてもしあわせなのではないかと思いました。守ってあげたいオーラが出ています。 決して口数は多くありませんが、ナナリーはとても話し上手で、ロロは楽しくおしゃべりをしてしまいました。 「お前ッ、誰だ!」 そのとき、ドアがけたましく開いて、王子さまが飛び込んできました。 続く |
20080822『ロロデレラ』続
パロってみようと思ったら…
ナナリーとロロが兄妹になったところ見てみたいなぁと思ったら…
ルルーシュ出てない(笑)